2025.07.23
「桐島です」
監督 高橋伴明
主演 毎熊克哉
正直、桐島聡という人間をほとんど知らないわたしとしては長年超危険人物な「連続爆弾犯」で、超危険人物な「革命家」で、超危険人物な「逃亡者」という認識しかなかった。
去年、今際の際に自白して死亡したニュースを見、さらに潜伏中の古ぼけたアパートで何十年と暮らしていたとか、近くの飲み屋での知人たちの証言などを聞くにつれ「なんとも惨めな人生だなぁ」と感じていた。
でこの映画。
題材はとても魅力的。主演の毎熊克哉も桐島によく似ていて他のキャストもいいのだが、映像全体がなんとも安っぽいのだ。冒頭、三菱本社ビル爆破の場面のCGは最たるもので、事件を伝えるニュースTVもやっつけ仕事のようで興醒めする。
また、桐島の心情も薄く物語は淡々と進む。彼がなぜ「さそり」に入ったのかがフワッとしてるし、逃亡生活の悲惨さや普通の青春を送れない無念さも感じられなかった。
もっともっと苦悩し悶絶している姿を見せて欲しかった。フィクションが強くなるかもしれないけども。。
そしてとても惜しいのだ。とても惜しい。
なぜなら、それでも桐島の長い潜伏時代が知れ、連続爆弾事件の全貌がわかるから。
なんともチープで幼稚なのだ。そして犠牲者を出さない無血革命を目指した事も知らなかった。
私があの指名手配の貼り紙の写真を見て空恐ろしかった記憶と、彼の実行した事件の程度がずいぶん乖離してるなぁと感じながら映画は終わります。
個人的な感想として、桐島はサソリの同胞・宇賀神のように早々に捕まって第二の人生を得たほうがよかった。彼自身、早く捕まえて欲しいと思ってたんじゃないだろうか。左翼分子に巻き込まれた人生を恨んでいたように思います。映画では描かれてはないけれど。
最後に、高橋伴明の個人的映画じゃないんだから、あんなラストはないだろう。興醒めだし意味がわからない。その部分抜きで85点。
繰り返すがとても惜しい、魅力的な素材の映画です。